2013年06月30日

東九州メディカルバレー“日本における人工透析技術セミナー(大分県・宮崎県)”

日本政府は、透析医療の海外展開を計画しています。東九州メディカルバレー(大分県・宮崎県)事業の一環として、東南アジアの腎臓内科、透析医療に携わる 医師、政府関係者に対して透析医療機関の施設見学要請が当施設にあり受入れました。

大分県においては、日本政府指揮下で大分県庁(産業集積推進室新産業支援班)と大分大学医学部附属病院腎臓内科友雅司診療准教授(血液浄化センター副センター長)が、「人工透析技術セミナー」の中心的活動を担っています。今回、2013年5月27日~6月1日の間に政府開発援助ODA(Official Development Assistance)の実施機関の一つである外務省所管の独立行政法人国際協力機構JICA(Japan International Cooperation Agency)と協力し「人工透析技術セミナー」を開催し、2013年6月22日~6月26日の間に経済産業省所管の独立行政法人日本貿易振興機構JETRO(Japan External Trade Organization)と協力し「海外有識者招へい事業(タイ王国・透析分野)」を開催しました。

【外務省所管 JICA事業 参加国・対象機関】
参加国は、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、インド、
マレーシア、南アフリカの8カ国 (タイ、インド、南アフリカ;JICA事業調査先)。
参加者17名(各国保健省・大学・病院の幹部等)の来院でした。

【経済産業省所管 JETRO事業 JETRO機械・環境産業部】
受入機関
① 行政:大分県、宮崎県(東九州メディカルバレー構想特区)、延岡市
② 大学:大分大学、宮崎大学、九州保健福祉大学
③ 企業:旭化成メディカル㈱、川澄化学工業㈱、東郷メディキット㈱
④ 病院:松山医院大分腎臓内科
タイ王国の主要3大病院5名の腎臓専門医とタイ王国政府関係者の来院でした。


当院では、水処理システム、原水(精製地下水)から透析液作成過程、多人数用透析液供給装置/セントラル透析液供給システムCDDS(Central Dialysate Delivery System)、全自動透析装置(コンソール)、オンラインHDF(Hemodiafiltration)機器、全自動透析装置を使用するための認可要件となる透析水質基準等についての研修を行いました。

日本透析医学会では、オンライン補充液は、sterile&nonpyrogenicとされ、10^-6未満という細菌数は理論値であり、実際では検出不可能です。そのため国際標準化機構ISO(International Organization for Standardization)基準では、透析機器製造業者によってバリデートされた装置を用いることでのみ達成できるとしています。日本におけるCDDSを用いたオンラインHDFは、上流から下流まで全ての機器が同一製造者によって保証されているわけではないことから最終透析液製造者である各施設長(院長)に管理責任が委ねられています。

日本透析医学会基準では、透析装置および透析液水質管理のために厚生労働省によって定められた医療機器安全管理責任者の下に「透析機器安全管理委員会」を設置し、この委員会を透析液製造責任者として一元的管理を行うこととしています。

特にオンラインHDFは、この委員会によってバリデートされた条件においてのみ使用可能であり、委員会の承認ならびに保証の下で使用することを求めています。各施設の管理責任とした根拠は、日本は諸外国と異なり、国家資格である臨床工学技士が医師と協力して透析機器の管理を行っている現状を考慮したためです。

松山医院大分腎臓内科は、自然資源に恵まれた精製地下水をバリデートされた環境でセントラル透析液供給システムCDDS(Central Dialysate Delivery System)を構築し、透析液は、オンライン補充液に相当するsterile&nonpyrogenicとされる細菌数10^-6未満(測定感度未満)という理論値を前施設時代から維持しており毎日の患者さんのコンソールに供給しています。

各国の研修員は、CDDSシステムに強く関心を示し、「水質浄化システムや超純水透析液・オンライン補充液を自国の標準にしたい。日本の透析レベルを自国に導入したい。」という声などが聞かれました。しかし、研修各国には臨床工学技士のシステムが無く規制改正や臨床工学技士制度創設など検討課題も山積しています。今後、JICA事業等を活用し開発していく予定となっています。

大分県では、東九州メディカルバレー構想の推進にあたり医療機器産業の一層の集積や医療分野でのアジアへの貢献を目指した取組みを進めています。
透析医療においては、大分大学医学部附属病院腎臓内科友雅司診療准教授(血液浄化センター副センター長)を中心に東九州メディカルバレー構想特区が誇る高い技術力や産学官連携による人材育成の取組み、透析治療の全体像等を紹介するとともに、意見交換を今後も行っていきます。

20130529JICA来院「人工透析技術セミナー」












東九州メディカルバレー構想特区
東九州メディカルバレー構想
独立行政法人国際協力機構JICA(Japan International Cooperation Agency)
独立行政法人日本貿易振興機構JETRO(Japan External Trade Organization)
日本人工臓器学会「全自動透析装置と透析液清浄化」川西 秀樹
人工臓器 Vol.39 No.1(2010)



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Posted by 松山医院大分腎臓内科 at 23:59 │医院について