2013年07月31日

イヌリンクリアランス(inulin clearance)について

イヌリンは、果糖が直鎖上に結合し、その末端にブドウ糖が付加された平均分子量3000~8000の多糖類です。普段よく食べているタマネギ、ゴボウなどといった多くの植物に存在します。「キクイモ」や「チコリ」には 特に多く含まれています。

【イヌリンの用途】
イヌリンを食品に入れた場合、例えばパンにほんの少量入れると、“きめが細かく”なり、
“モチモチ”した食感になるようです。クッキーに入れると“サクサク”します。
このように食品添加物として日本では使用されていました。

また、イヌリンが麹菌や酸によって加水分解して生成するフルクトース(果糖)は、糖尿病に優しい栄養・甘味料である事や、摂取したイヌリンは体内に吸収されず、腸の中で水溶性の食物繊維として働くという事で、最近はサプリメントとしても利用されています。

【腎機能検査薬としてのイヌリンの特性】
イヌリンは腎機能の指標である糸球体ろ過量(GFR)を測定する上で以下の様な理想的な特徴を有しており、イヌリンクリアランス(Cin)はGFR測定のgold standardとされています。

【特徴】
・血漿蛋白と結合しない
・糸球体基底膜を自由に透過する
・尿細管で再吸収・分泌されない
・生物学的活性がない
・体内で代謝されない(腸内のバクテリアで分解)

eGFRはあくまで簡易評価と考えるべきであり、
より正確な腎機能評価を要する場合は実測GFRが望ましいとされています。

【イヌリンクリアランス検査の実際】
1 腎疾患患者における腎機能の正確な評価
2 腎移植ドナーが腎臓を提供する前
3 腎排泄性薬剤の投与量設定
4 筋肉量の減少している患者又は少ない患者
  (老人、長期臥床、筋萎縮疾患等)
5 薬剤の腎機能に対する評価
6 血清Cr値の変動が大きな患者

腎機能の基本である糸球体濾過量(GFR)の国際標準測定法はイヌリンクリアランス測定
ですが、保険収載されたのはつい最近(2006年)のことです。

現在、日本の全ての医療機関で“eGFR推算式”は使用されるようになりましたが、
「日本腎臓学会プロジェクト日本人のGFR推算式」に参加した
71施設の真のGFR「イヌリンクリアランス」測定結果をもとに作成されました。
大分県からは唯一、当施設がプロジェクトに参加し、新しいeGFR推算式が完成される
歴史に関わっていました。

当院では、腎臓内科入院において常時
「イヌリンクリアランス(Cin)」測定可能な体制としています。
イヌリンクリアランスの詳細については、腎臓内科外来にてご確認下さい。


イヌリンクリアランスとは





















関連リンク
イヌリード注 富士薬品
日本腎臓学会



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Posted by 松山医院大分腎臓内科 at 23:59 │腎臓内科に関する事