「学校検尿」は何のために行われるの?
日本の「学校検尿」は世界に先駆けて1974年に開始され、多くの小児慢性腎炎が早期発見できるようになりました。経過によっては、腎不全に至るものもありましたが、最近の治療の進歩で腎不全への進行を抑制できる場合もあります。このため「学校検尿」は、腎不全に陥るような腎炎を早期に発見して精査と治療の開始や進行を抑えることが可能な医療機関へ紹介する目的で行われています。
検尿陽性者で精査が必要な場合は、腎生検による確定診断(病型や病期の把握)で適切な治療を選択することができるようになりました。代表疾患として
「IgA腎症」があげられます。最近、成人領域では、「IgA腎症」に対し、
「扁桃摘出術とステロイドパルス療法」を組み合わせた治療の効果が確認されています。「血尿+蛋白尿」の場合、約60%に腎炎が発見され、腎生検可能な医療機関での精査が必要となります。
「九州学校腎臓病検診マニュアル 第3版」(平成23年1月九州学校検診協議会腎臓専門委員会)は、検尿異常者の検診の進め方やその理由が分かりやすく記載されており、専門医への紹介の必要な基準など、従来適切に取り扱われていなかった異常者の精密検査方法についても記載されています。現在改訂中の管理基準を大きく変えた「新・学校検尿のすべての改訂版」にも反映されるものと思われます。このマニュアル内容は、成人における評価においても関連するところがあります。全ての検診において「尿検査」は必須項目となっており、学校医の先生だけでなく、成人病検診医や特定健診を行なう一般内科医、保健師など検診業務に関わる医療者は一読する意義があるマニュアルとなっています。
小児期(14歳まで)は、小児科外来での経過観察となりますが、小児期からのキャリーオーバーとなる15歳以上の場合及び高等学校での「学校検尿」で陽性となる場合は、腎臓内科外来での経過観察が必要となります。
15歳以上での検尿異常については、当院の
「腎臓内科外来」までお問い合わせ下さい。
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