「ノロウイルス」とは? 感染性胃腸炎の感染防止指針

松山医院大分腎臓内科

2012年12月30日 13:31

「ノロウイルス」による感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、特にこの季節(冬季)に流行します。「ノロウイルス」は手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、嘔吐、下痢、腹痛などを起こします。免疫力(抵抗力)のある基礎疾患の無い健康な方は軽症で回復しますが、幼児や基礎疾患のある老人では、重症化したり、吐物を誤って気道に詰まらせて死に至ることもあります。「ノロウイルス」対策は、ワクチンや、また、特別な治療法もないため、輸液などの対症療法に限られます。

ウイルスは、電子顕微鏡下で球形をしていたことから「小型球形ウイルス」の一種と考えられていました。非細菌性急性胃腸炎の患者から「ノーウォークウイルス」に似た小型球形ウイルスが発見され、一時的に「ノーウォークウイルス(1968年にオハイオ州ノーウォーク町の小学校で集団発生した急性胃腸炎)」、これらを総称して「小型球形ウイルス」と呼称されていました。
「ノロウイルス」と正式に命名されたのは、2002年8月の国際ウイルス学会です。

「ノロウイルス」の検査については、これまで保険適応がありませんでした。
2012年4月1日の診療報酬改訂後、新たに保険適用開始となりました。
適用項目は、ノロウイルス抗原定性(迅速検査:ノロウイルス抗原キット)
検査留意事項があります。
ノロウイルス抗原定性は、以下(ア〜オ)のいずれかに該当する患者について、
当該ウイルス感染症疑われる場合に算定する。
ア 3歳未満の患者

イ 65歳以上の患者

ウ 悪性腫瘍の診断が確定している患者

エ 臓器移植後の患者
オ 抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、又は免疫抑制効果のある薬剤を投与中の患者

「ノロウイルス」は、「インフルエンザウィルス」にある様な特効薬はなく、対症療法となりますが、少量のウイルス量でも感染し(ごくわずかな糞便や嘔吐物が付着した食品で感染し発症させる)、高齢者や乳幼児では重症化することもあり、同居家族内感染、学校集団感染、医療機関での感染対策が重要となります。また、老人施設、給食関連施設等においても管理上の問題が発生します。
これらの点からも「ノロウイルス」感染症の可能性の有無を確定する検査を実施する意義があります。

国立国際医療研究センター研究所感染制御研究所は2012年12月25日、
「ノロウイルスなどの感染性胃腸炎による院内感染対策防止手順資料集」を作成し、
国立国際医療研究センターのホームページに掲載しています。

厚生労働科学研究「新型インフルエンザ等の院内感染制御に関する研究」(平成 22年〜24年度)では、全国の院内感染対策の実務担当者が集まって実際にそれぞれの医療現場で使用している感染対策活動に利用している様々な資料を持ち寄り、メリハリのある院内感染に関する検討を重ねてきました。この資料はその成果「院内感染防止手順」第3版の感染性胃腸炎・食中毒の章を抜粋したものです。

感染性胃腸炎や食中毒の発生時や集団発生時の対応フローチャート、患者への対応、一般病棟での対応、手指消毒の方法、防護用具、予防対策、消毒液の作り方に加え、
ノロウイルスに特化した感染対策フローチャートや2次感染防止策を掲載しています。

一般の方には、厚生労働省のサイト内にある「ノロウイルスに関するQ&A」
“ノロウイルス食中毒の予防”、“感染を広げないために”を一読することをお勧めします。
日常生活から感染対策をシッカリ行い、ウイルス感染症の流行を未然に防ぎましょう。


【関連リンク】
ノロウイルスなどの感染性胃腸炎による院内感染対策防止手順資料集
(国立国際医療研究センター研究所 感染制御研究所 切替 照雄)
ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)
ノロウイルスによる食中毒や感染に注意 
~感染性胃腸炎は過去10年間で2番目に多い水準~
2012年11月27日(厚生労働省)

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