校医の健康だより“子どものメタボリック症候群が増えている”

松山医院大分腎臓内科

2013年01月27日 10:57

当院は、隣接する我が母校「大分市立東稙田小学校」の学校医です。
2011年から同小学校PTA新聞の連載シリーズ「校医の健康だより」を担当しています。
今回は、2013年3月発行号に向けて作成した内容をversion改変して綴ります。

最近、肥満傾向の小児が増えています。文部科学省学校保健統計調査書によると、
肥満児は、30年前と比べ約2倍に増え、約10人に1人となっています。
「メタボリック症候群」対策は、成人だけの問題ではありません。小児肥満の約70%が、成人肥満に移行するとされ、また高度の小児肥満は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を合併する可能性も高くなるため、小児期からの肥満予防が重要であると言われるようになりました。

厚生労働省より「小児期メタボリック症候群」の診断基準が、作成されています。
6歳から15歳を対象とした診断基準では、
必須項目
・腹囲 中学生 80cm 以上、小学生 75cm 以上
    腹囲(cm)÷ 身長(cm)値 0.5 以上
選択項目(以下のうち2項目以上)
・脂質 中性脂肪 120mg/dl 以上
・血圧 収縮期血圧 125mmHg 以上 かつ/または 拡張期血庄 70mmHg 以上
・血糖 空腹時血糖 100mg/dl 以上

一方、成人の診断基準は、
必須項目
・腹囲 男性 85cm 以上、女性 90 cm 以上
選択項目(以下のうち2項目以上)
・脂質 中性脂肪 150mg/dl 以上、もしくは HDL-C 40mg/dl 未満
・血圧 収縮期血圧 130mmHg 以上 かつ/または 拡張期血庄 85mmHg 以上
・血糖 空腹時血糖 110mg/dl 以上

小児期メタボリック症候群を防ぐには、生活習慣の改善が大事です。
朝食を欠食し、夕食時間、睡眠時間も遅くなることが、小児期メタボリック症候群を促進させる要因であることも示されています。
また、スナック菓子などが、コンビニなどで気軽に手に入ることも問題です。
さらに、部屋にこもってゲームなどの室内遊びの生活は、外に出て体を使った運動をしている小児に比べて肥満になりやすいという調査結果があります。

そして2型糖尿病は、遺伝的な体質に、運動不足や食べ過ぎによる肥満やストレスなどが重なり発症します。小児の2型糖尿病の存在が顕在化したのは1990年代に学校検診の検尿で尿糖検査が取り入れられてからのことです。(学校検尿は、小児腎臓病の早期発見を目的に血尿・蛋白尿の項目で1974年に開始されましたが、1992年に小児糖尿病の早期発見を目的として法律が改正され、尿糖検査も義務付けられました。)

日本小児内分泌学会による2003年全国調査で2型糖尿病の診断時における肥満度を調べたところ、肥満度20%以上は男子で78%、女子で63%と報告されており、肥満が2型糖尿病の重要な危険因子であることを裏付けるともに、小児メタボリック症候群への対応の重要性を示唆しています。

しかし、尿糖陽性だからといって糖尿病の確定診断にはなりません。「腎性糖尿」という血糖値が高くないのに尿に糖が出る病態があります。「腎性糖尿」と診断された場合は、糖尿病の治療は不要です。ただし、家族歴に糖尿病の方がいる場合は、経過観察とします。
また、感染症にかかった時に一時的に血糖値が高くなり、尿に糖が出ることもあります。小児に限らず、成人においても、糖尿病でない尿糖陽性の診断には、腎臓機能障害の有無も含めた精密検査を受けることをお勧めします。

小児期メタボリック症候群の診断基準をもとに、家庭においても、子供や自分自身の腹囲を測定してみましょう。子供の未来を考え、また自身の健康管理を行い、メタボリック症候群の早期発見と毎日の生活習慣の改善を実践していきましょう。


関連リンク
メタボリックシンドローム・ネット“小児肥満と小児メタボ”
小児肥満対策推進委員会 平成23年度「子供の食生活実態調査アンケート」調査結果
厚生労働省 メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト
“子どものメタボリックシンドロームが増えている”
母子保健情報 第56号(2007年11月)“子どものメタボリックシンドロームと食育”
浜松医科大学小児科学教授 大関武彦
知っ得?納得!!メタボリックシンドローム
“子どもにも広がるメタボリックシンドローム”
院長ブログ 2012年4月5日号“「学校検尿」は何のために行われるの?”
母子保健情報 第60号(2009年11月) “思春期における生活習慣病” 東京女子医科大学東医療センター小児科教授 杉原茂孝
社団法人日本腎臓学会“腎臓病とは-おしっこ大事典”
大分市立東稙田小学校 1877年創設

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