2013年04月04日

私たちは腎臓の元気を守ります!!病診連携システム協力医療機関

大分市慢性腎臓病(CKD)病診連携システムがはじまります。

“院長ブログ2013年2月28日号”にて
皆さんにご紹介しました「大分市慢性腎臓病病診連携システム」が起動します。

大分市ホームページでは、普及啓発を目的に2013年4月3日より市民の皆さんと医療機関に向けた「大分市慢性腎臓病病診連携システム」専用ページを作成し公開しています。


【大分市慢性腎臓病病診連携システム】
からだの中の老廃物を尿として排泄し、血液をきれいに保ってくれる大事な「腎臓」。
この機能がさまざまな理由で低下する「CKD(慢性腎臓病)」が問題になっています。
自覚症状がないままに進行し、その機能が失われてしまうと、腎不全で死に至る危険もあります。

CKDの重症化予防のためには、一人の患者さんに対して、必要に応じて“かかりつけ医(病診連携医)”と“腎臓専門医”とが併診(診療連携)を行うことが効果的です。この併診を行う、「大分市慢性腎臓病病診連携システム」が2013年4月からスタートします。


【病診連携の内容】
より良いCKD診療のため、かかりつけ医と腎専門医が併診(診療連携)して患者さんの治療を継続するものです。

1 健診の結果で、腎機能が受診勧奨レベルとなった方は、
  かかりつけ医(病診連携医)を受診し相談します。


2 かかりつけ医は、診察の結果、患者さんの腎機能が紹介基準にある場合、
  腎専門医へ紹介します。
 
  ◎紹介シート使用(医療機関用)
   クリックで拡大表示します。











3 腎専門医は、必要な検査等をおこない、正確な腎機能を把握し、病気の診断
  及び治療方針の決定を行います。その情報をかかりつけ医へ提供します。

  ◎返信シート使用(医療機関用)
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4 かりつけ医は、腎専門医からの指示を受け、CKD診療を継続します。

5 その後も腎専門医とかかりつけ医は連携して患者さんにより良い治療を行いま
  す。必要に応じて腎専門医に再紹介し、腎機能の判定や治療方針の変更を行い
  ます。

  ◎CKD手帳の活用



【連携システム概要】
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【紹介基準】
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【保健所への連絡票】
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「腎専門医」および「病診連携医」の各医療機関は下記のステッカーが目印です。























松山医院大分腎臓内科は、慢性腎臓病(CKD)病診連携システム協力医療機関です。





関連情報[大分市ホームページにリンク]
大分市慢性腎臓病(CKD)病診連携システム協力医療機関を紹介します
慢性腎臓病(CKD)って何だろう?あなたの腎臓大丈夫?

医療機関用ダウンロードファイル[大分市作成]
紹介基準・専門医への紹介基準 (Microsoft Excel:37KB)
紹介シート (Microsoft Excel:43KB)
保健所への連絡票 (Microsoft Excel:28KB)
返信シート (Microsoft Excel:33KB)
連携システム概要 (Microsoft Excel:58KB)
  


Posted by 松山医院大分腎臓内科 at 13:33腎臓内科に関する事

2013年04月01日

透析患者における高血圧治療とドライウェイト管理

透析患者の血圧管理については、日本透析医学会より「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」1)が、2011年に公開されています。本ガイドラインでは「ドライウェイト(DW)の定義」も触れています。患者さんにも適正ドライウェイト(DW)管理が最も重要であることを理解して頂きたく、本ガイドラインの高血圧管理の項目をドライウェイト(DW)の定義も含めて一部抜粋しました。疑問点は院長回診で確認下さい。

透析患者の高血圧病態
透析患者における高血圧の成因には、
体液量(細胞外液量)過剰
② renin-angiotensin system 系の異常(容量負荷に対する不適切なアンジオテンシンIIの
  反応性)
③ 交感神経活性の亢進
④ 内皮依存性血管拡張の障害
⑤ 尿毒素
⑥ 遺伝因子
⑦ エリスロポエチン、などの関与が指摘されている。
特に体液量過剰は主要因であり、その是正により60%以上の患者で血圧を正常化できる
ことが報告されている。2),3)

透析患者における降圧治療の原則はドライウェイト(DW)の適正化が最も重要で、その達成と維持によっても降圧が不十分な場合に降圧薬投与が有効となる。

【血圧管理についてのステートメント】
1 透析患者における血圧は、透析室における血圧のみならず家庭血圧を含めて評価すべ
  きである(1B)。
2 心機能低下がない、安定した慢性維持透析患者における降圧目標値は、週初めの透析
  前血圧で140/90mmHg未満とする(オピニオン)。
3 目標血圧の達成にはドライウェイト(DW)の適正な設定が最も重要である(1B)。
4 DWの達成/維持後も降圧が不十分な場合に降圧薬を投与する(1B)。

【適正なドライウェイト(DW)設定のための指針】
DWの定義
DWとは「体液量が適正で透析中に過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義する。臨床的に設定する方法は明らかではない。
また、臨床的に、体液量過剰状態が明らかでなくても、透析患者では常に体液量は過剰である(silent overhydration)4)
Scribnerは、DWが適正に維持されれば透析患者には降圧薬は不要であると指摘した5)
しかし、高齢者や導入前にすでに動脈硬化性病変が高度な患者ではDWを厳格に設定することは困難なことが多い。
一般的に採用されているDW設定の指標としては、透析中の著明な血圧低下がない、透析終了時血圧は開始時血圧より高くなっていない6)、末梢に浮腫がない、 胸部X線で胸水や肺うっ血がなく、心胸郭比50%以下(女性では53%以下)などがあげられる。

体液量の評価
透析患者の体液量を理学的に評価する場合、浮腫の存在と高血圧は体液量過剰の最も鋭敏な指標である。
理学的所見のほかに繁用される指標として心胸郭比(CardioThoracic Ratio:CTR)がある。CTRには体液量の変動以外に、貧血、腹水、肥満、心肥大、弁膜症・心筋梗塞・心房細動などの心障害、シャントの過剰発達、心囊液貯留などが影響することに注意しなければならない。また、透析前後、体重の増減によって変化するので、DW設定を目的としたCTR測定のための胸部X線は、体重が最も増加している週初めの透析前に行うべきである。
ただし、目的に応じて適宜撮影される。CTRは、胸部X線で最大胸郭径と最大心横径の比率を用いる。
心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)を体液量の評価として用いることがあり、保険でも月に1回の測定が認められている。しかし、その基準は報告によりさまざまで、DW達成時には50〜100pg/mL以下である7)。しかしながら、器質的な心疾患では高値を示し、hANPはDWの指標とはならない。

DW達成までの期間
透析中の血圧低下を回避しながら除水して降圧されていくのを観察することになる。降圧が目標値に到達する、すなわち、体液量の是正のみで目標血圧値となる時の体重(DW)を達成するまでには、通常、4〜12週間が必要で、症例によっては、6〜12ヵ月を要することもあり、慎重に経過を観察することが重要である8)。DW達成と降圧効果の出現との間には時間差があるためと考えられ、ADMA(Asymmetric DiMethyl Arginine:一酸化窒素合成酵素の内因性阻害物質)やDLIS(Digoxin-Like Immuno reactive Substance:ジギタリス様免疫反応物質)などの関与が推定されている9)DWを変更する際は、透析ごとに0.3〜0.5kg程度毎に徐々に変更していき、週後半でDWに達するように緩徐に行うべきである。
ADMA(Asymmetric DiMethyl Arginine:一酸化窒素合成酵素の内因性阻害物質):ADMAは血管内皮機能の制御における最も重要な役割を果たすNOS(Nitric Oxide Synthase:一酸化窒素合成酵素で血管拡張作用、血小板凝集抑制作用をもつ)に対する内因性阻害物質。末期腎臓病患者において血中ADMAが増加しており、血中ADMA濃度は血管内皮機能低下と相関するのみならず、血管合併症や生命予後の独立した危険因子といわれている。
DLIS(Digoxin-Like Immuno reactive Substance:ジギタリス様免疫反応物質):透析患者でDLISが検出されやすいという報告や高血圧患者でDLISが高値になるという報告がある。


体重増加について
腎機能が廃絶し無尿・乏尿の透析患者では透析間に体重が増加する。その増加量は食塩摂取量と尿量に依存する。血清Na濃度140mEq/Lは食塩水に換算すると 8.2g/Lに相当するので、無尿の患者では8.2gの食塩が体内に蓄積すると、透析患者でも浸透圧上昇に伴う口渇中枢の刺激と抗利尿ホルモンの分泌系は保たれていると仮定すると、浸透圧を等張にすべく1 Lの水を飲水し、理論的には1kg の体重増加が生じる。実際には汗と便を合わせて1日1gの食塩が排泄されるため、週末の透析後、1日15gの食塩摂取で体内には14gが蓄積し1.7kgの体重増加となる。口渇によらない飲水行動にも留意する必要がある。その原因としては、高血糖、お粥の摂取、点滴、お茶などである。透析間体重増加量をどの程度にすべきかに関してはいくつかの報告がある。
USRDS(The United States Renal Data System:米国腎臓データシステム)では、
4.8%(体重70kgで3.4kg)以上の体重増加は予後不良であると報告している10)

透析間体重増加量は、週末でも1.5〜2.0kgにすべきことが推奨されている11)
K/DOQI(The National Kidney Foundation Kidney Disease Outcomes Quality Initiative:米国腎臓財団提唱腎臓病予後改善対策)では1日食塩摂取量は5g以下を推奨している12)。1日5gの食塩摂取では体重70kgの人で最大透析間体重増加が1.5kgになる13)日本高血圧学会では高血圧治療として6gの1日食塩摂取量を推奨している14)
しかしながら、塩分制限が強いあまりに、食欲低下から低栄養状態になることを避ける必要がある。


降圧薬の選択
適切なDWを設定し、それが達成されても降圧が得られない場合に降圧薬投与を考慮する。透析患者における降圧薬選択についてのエビデンスは乏しいが、非透析例で得られた成績を参考にして適用することになる。血圧の評価は1週間単位で、家庭血圧も参考にし、降圧薬を透析日は投与しないなど画一的な指導に終わらず工夫し、1週間にわたって血圧管理が良好に行われることをめざす。降圧薬の選択にあたっては、心肥大抑制など臓器保護効果があることを優先する。作用時間の長短を組み合わせる、透析性と血圧変動を考慮して服薬時間を決定する、透析後に服薬する場合には帰宅後、家庭において降圧が過度に陥る危険性があることに注意する、など留意すべきである。また、降圧が不十分な場合、患者が服薬していない可能性も考慮しなければならない。
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)やアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)などのレニン・アンジオテンシン阻害薬は左室肥大抑制効果など心血管系保護効果が明らかで透析患者についても第一選択薬となる降圧薬である。とくに、ARBは胆汁排泄が主体で、透析性もなく、咳嗽などの副作用もないので投与しやすい。
β遮断薬は、心筋梗塞の既往例や有意な冠動脈疾患を有する例で積極的な適応となる。
DOPPS(Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study:血液透析患者さんの治療方法と予後について調べている国際的調査)研究では、β遮断薬使用群の生存率が最も良好であったと報告されている。カルシウム拮抗薬の投与も奨められる。いくつかの前向き観察研究で、全死亡や心血管障害死亡を有意に減少させた。透析患者では交感神経活性の亢進も存在し、以上の降圧薬で管理できない場合に中枢性交感神経作動薬やα遮断薬も考慮する。しかし、起立性低血圧など、副作用も多いことから2次的選択薬となる。

高血圧治療の実際
透析患者における高血圧治療の実際を【図1】のようなアルゴリズムで示す。高血圧治療には必要量の透析が確保されていること(適正透析)が前提条件で、透析時間、回数、血液流量、透析膜などの透析条件を再考すべきである。その上でDWの適切な設定・達成・維持をめざすべきである。それでも降圧が得られない場合に降圧薬を投与することになる。
逆に、透析中に高度の血圧低下が発生し、降圧薬の影響が考えられる場合には、降圧薬の減量・中止を考慮し、DWを再度設定し直して経過観察した後に適切な降圧薬を選択すべきである。

体液量の管理
透析患者の高血圧治療の基本的治療は体液量過剰の是正することで、減塩を基礎として透析間の体重増加を抑制した上で適切なDW設定を行う。日本透析医学会の統計調査委員会によれば、透析間の体重増加量が体重の2%以下と6%以上で予後が不良であった15)。USRDSでも4.8%以上の体重増加では予後不良であると報告している8)。透析間の体重増加を抑制することは透析中の血圧低下を防ぐためにも有効に作用し、中1日でDWの3%、中2日では5%を限度とすべきである。一方、透析中の血圧低下を防止するためにDWを安易に上げることは避けるべきである。

【図1】高血圧治療のアルゴリズム
[日本透析医学会:透析会誌2011;44:337-425より]
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【透析患者の高血圧治療のポイント】16)改変
1 心機能の明らかな低下がないかの確認。ないことが前提で週初めの透析開始時で
  140/90mmHg未満を目標とする。透析後はこの値より下がっている必要があるが、
  透析中に急な血圧低下がないことが重要である。
2 ドライウェイト(DW)を適正に維持する。明らかな胸水やうっ血がないことが重要であ
  り、徐々に除水する。心胸郭比(CTR)50%未満を目標とするが、迷う場合は、hANPな
  どを併用して決定する。
3 ドライウェイト(DW)を適正に設定してもなお血圧高値を認める場合は、RAS阻害薬を
  開始しそれでも適正血圧に維持困難な場合はカルシウム拮抗薬やβ遮断薬を追加する。
4 決定や変更の際には立位血圧値を確認することが望ましい。特に糖尿病性自律神経障
  害がある患者の場合は、慎重に降圧管理を行う必要がある。


1)「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」透析会誌44(5):337-425, 2011
2)Zucchelli P, Santoro A, Zuccala A:Genesis and control of hypertension in hemodialysis patients. Semin Nephrol 8:163-168, 1988
3)Agarwal R, Alborzi P, Satyan S, Light RP:Dry weight reduction in hypertensive patients(DRIP). A randomized, controlled trial. Hypertension 53:500-507, 2009
4)Dorhout Mees EJ, Ozbash C, Akcicek F:Cardiovas- cular disturbances in hemodialysis patients:The importance of volume overload. J Nephrol 8:71-78, 1995
5)Scribner BH:Can antihypertensive medications control BP in haemodialysis patients:yes or no? Nephrol Dial Transplant 14:2599-2601,1999
6) Inrig JK, Oddone EZ, Hasselblad V, Gillespie B, Patel UD, Reddan D, Toto R, Himmelfarb J, Winchester JF, Stivelman J, Lindsay RM, Szczech LA:Association of intradialytic blood pressure changes with hospitalization and mortality rates in prevalent ESRD patients. Kidney Int 71:454-461, 2007
7)赤井洋一,草野英二,古谷裕章,大野修一,江幡 理, 手塚俊文,安藤康宏,鈴木宗弥,田部井薫,浅野 泰: 透析患者の ANP は体液貯留の指標となりうるか? 透析会誌 24:1143-1148,1991
8)Chazot C, Charra B, Vo Van C, Jean G, Vanel T, Calemard E, Terrat JC, Ruffet M, Laurent G:The Janus-faced aspect of dry weight; Nephrol Dial Transplant 14:121-124, 1999
9)Khosla UM, Johnson RJ:Editorial:Hypertension in the hemodialysis patient and the Lag Phenomenon :Insights into pathophysiology and clinical management. Am J Kidney Dis 43:739-751, 2004
10)Foley RN, Herzog CA, Collins AJ;United States Renal Data System:Blood pressure and longterm mortality in United States hemodialysis patients:USRDS Waves 3 and 4 Study. Kidney Int 62:1784-1790, 2002
11)Campese VM, Tanasescu A:Hypertension in dialysis patients.In Principles and Practice of Dialysis(sed3). ed Henrich WL, Philadelphia, PA, Lippincott Williams & Wilkins, pp227-256, 2004
12)K/DOQI Workgroup:K/DOQI clinical practice guidelines for cardiovascular disease in dialysis patients. Am J Kidney Dis 45(4 Suppl 3):S1-153, 2005
13)Shaldon S:What clinical insights from the early days of dialysis are being overlooked today? Semin Dial 18:18-19, 2005
14)高血圧治療ガイドライン 2009(JSH2009).日本高血 圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編集.ライフサイエンス出版,東京,2009
15)新里高弘,佐中 孜,菊池健次郎,北岡建樹,篠田俊 雄,山﨑親雄,坂井瑠実,大森浩之,守田 治,井関 邦敏,秋葉 隆,中井 滋,久保和雄,田部井薫,政 金生人,伏見清秀:わが国の慢性透析療法の現況(1999 年 12 月 31 日現在).透析会誌 34:1-33,2001
16)CKD・透析関連領域におけるガイドラインを日常診療にどう生かすか 臨床透析2012Vol.28 No7
  


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