2012年09月27日

L-FABP(尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白)尿中エルファブとは

新しい腎疾患診断用の尿中バイオマーカーとなる「L-FABP」についての説明会が、開発元であるシミックホールディングス株式会社によって2012年9月20日に当科コミッティールームにて行なわれました。

「L-FABP」とは、Liver-type Fatty Acid Binding Protein(肝臓型脂肪酸結合蛋白)の略称で、肝臓と腎臓の 「近位尿細管」で特異的に発現する分子量14 kDaの脂肪酸結合タンパク質です。腎障害が起こり、肝臓から排出された「L-FABP」が腎臓で再吸収されなくなった場合に、尿中に排出されます。(腎機能障害がない場合は、肝臓から排出された「L-FABP」は腎臓で再吸収され、尿中にはほとんど現れません。)
「尿中L-FABP」は、腎近位尿細管の細胞質由来の物質で、尿細管の虚血や尿細管への酸化ストレスによって尿中に排泄されるため「尿細管機能障害を伴う腎臓疾患」の早期診断に有用とされています。

従来、早期腎臓機能障害の指標としては、「尿中アルブミン」検査が一般的でした。
しかし、「尿中アルブミン」検査は、広義でのCKDに対する保険適応はありません。
現在、日本における「尿中アルブミン」検査は、早期の糖尿病性腎症の診断においてのみ保険適応となっています。
しかし、CKDの早期診断には有用であることから、腎臓病早期発見推進機構IKEAJのKEEP検診の検査項目に含まれており、当院では毎月第4火曜日午前に完全予約制で無料検診を実施しています。
KEEP無料検診については、当院までお問い合わせください。

一方、「尿中L-FABP」は、広義でのCKDに対して保険適応となっています。原則的に3ヶ月に1回に限り算定可能となっており、「尿中アルブミン」と同日同時測定についても縛りがなく両者測定も可能となります。また、同時測定の意義としては、糖尿病患者のうちeGFR60以上の患者群で「尿中L-FABP」と「尿中アルブミン」の両者ともに異常値を示した群は、他群(いずれか一方のみ異常を示した群)に比較し、腎機能が有意に低下している事を開発元データ上で明らかにしています。
従って、尿細管機能を反映する「尿中L-FABP」は、糸球体障害の指標である「尿中アルブミン」と同時に測定することによって、早期糖尿病性腎症の病期進行リスクを判別可能とする非常に有用なバイオマーカーとなります。
広義でのCKD患者管理においても有用性のある尿中バイオマーカーとなります。

当科では、臨床研究の中で「L-FABP」を含む評価も行なってきましたが、
「早期腎機能障害の指標」として2011年8月11日より健康保険適応開始となっています。

「L-FABP」には、専用Webサイトがあります。
http://www.anywhere-plus.org/l-fabp/info/
「L-FABP」に関するFAQや各文献の案内が掲載されており、
一般の方でも理解しやすく参考になるページとなっています。
ぜひ皆さんもアクセスしてみてください。



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Posted by 松山医院大分腎臓内科 at 18:28 │腎臓内科に関する事