2012年07月03日

歯周病(病巣感染)と生活習慣病(全身疾患に及ぼす影響)

「身体のどこかに限局した慢性感染病巣(原発病巣)があって、それ自体は無症状か軽微な症状を呈するに過ぎない。しかし、これが原因になって原発病巣とは直接関係のない遠隔の諸臓器に反応性の器質的あるいは機能性の障害を起こす病像、いわゆる二次疾患をさす」と病巣感染は定義されている。

私事ですが、右下側にコンディション不良の歯「歯周病」が1本あり、歯科治療の経過で主治医に1年以上これまで何とか抜歯しない方法で経過Follow頂いていましたが、コントロール不良遷延化にて今回、半抜歯(6歳臼歯は根が2つあり片方を抜歯)施行されました。

「歯周病」について確認してみます。日本歯科医学会の「歯周病の診断と治療の指針」
によると、「歯周病」は歯周疾患ともよばれ、歯肉、セメント質、歯根膜および歯槽骨よりなる歯周組織に起こるすべての疾患をいう。

ただし、歯髄疾患の結果として起こる根尖性歯周炎、口内炎などの粘膜疾患および歯周組織を破壊する新生物(悪性腫瘍など)は含まない。

「歯周病」は、プラーク中の口腔細菌が原因となって生じる炎症性疾患であり、「歯肉炎」と「歯周炎」とに大別される。

さらに、「歯周病」には非プラーク性歯肉病変、歯肉増殖、壊死性歯周疾患、歯周組織の膿瘍、歯周‐歯内病変、歯肉退縮および強い咬合力や異常な力によって引き起こされる咬合性外傷が含まれる。

また最近、「歯周病」は「生活習慣病」として位置づけられ、食習慣、歯磨き習慣、喫煙、さらに糖尿病などの全身疾患との関連性が示唆されており、患者個人の生活習慣の改善、「自助努力なくして歯周治療の成功はあり得ないと言ってもよい。」とされている。

「歯肉炎」の特徴
種々ある歯肉炎のうち、主なものは「プラーク性歯肉炎」。
口腔清掃を中止してプラークが歯面に付着・増加すると2~3 日で歯肉に炎症徴候が生じる。プラークは歯・歯肉・修復物および補綴物などに付着する多数の細菌とその代謝産物から形成される。これには、プラークを増加させたり、プラークの除去を困難にする因子である「プラークリテンションファクター」および患者の生活習慣が大きく関与する。

プラークリテンションファクター:プラークコントロールを困難にしたり、プラークの停滞を促進する誘因となる「歯石・歯列不正・小帯異常・不適合修復・補綴物などがあるとプラークを付着・増加させたり、プラークコントロールを阻害する」これらの因子のことをいう。

口腔衛生習慣の改善により、日本人の虫歯は減少してきました。

しかし、「歯周病」はあまり減少することなく、現在でも30歳以上の成人の約80%が「歯周病」にかかっており、歯の喪失原因の第1位になっています。
日本臨床歯周病学会では、「一般の皆様へ」のQ&Aサイトを開設しています。皆さんも自己チェックをお勧めします。

また、日本臨床歯周病学会では、「歯周病が全身に及ぼす影響」について
以下疾患について分かりやすくまとめています。コチラも確認してみましょう。
歯周病と関連する全身疾患
◇心臓疾患(狭心症・心筋梗塞)・脳血管疾患(脳梗塞)
◇糖尿病
◇妊娠(妊娠性歯肉炎・低体重児早産)
◇誤嚥性肺炎
◇骨粗鬆症
◇関節炎・腎炎
◇メタボリックシンドローム

そして、慢性腎臓病(IgA腎症)における病巣感染の好発部位は扁桃、副鼻腔、鼻咽腔、および歯科領域です。病巣感染については、「IgA腎症根治治療ネットワーク」のサイト内で詳細に解説されています。

当院での「IgA腎症」に対する治療は、「IgA腎症根治治療ネットワーク」に準じて実施しています。「IgA腎症」の方は、是非サイトチェックをお勧めします。

また、「IgA腎症根治治療ネットワーク」の代表で、「扁摘パルス療法」の師匠である堀田修先生は、仙台市内の自院において診療展開されています。

堀田先生は、歯科治療にも取組まれています。WEBサイトのインフォメーションに示されていましたが、糖尿病・慢性腎臓病・膠原病などの全身疾患に対する治療の一環として「3Mix-MP法」を中心とした「内科的歯科治療」を実施しているところには、「木を見て森も見る医療の実践」を掲げる先生の真摯な姿勢であり、深く感銘を受けました。

「3Mix-MP法」は、新しい治療法となります。大分市にはこの方法で治療をされる歯科医院は未だ無い様です。自身の歯のコンディションについては、改善しない慢性感染状態の遷延化した結末となる、いわゆる二次疾患発症も危惧し、根治療法(今回半抜歯)を主治医に施行して頂きました。

「IgA腎症」における「扁摘パルス療法」は、多くの腎臓専門医に認知されてきましたが、歯科疾患における「3Mix-MP法」についても今後の展開に注目していきたい治療法です。

いずれにしても「歯周病」は、「生活習慣病」として捉え、日々の家庭生活における自己管理をシッカリ行う(自身については、特に睡眠時間をある程度は確保する!)ことが最も重要であることを身をもって確認しました。

しかし、レセプトシーズン「眠れない夜」が今日も続きます。


関連サイト
日本歯科医学会
日本臨床歯周病学会
IgA腎症根治治療ネットワーク
堀田 修クリニックーHOCー



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Posted by 松山医院大分腎臓内科 at 02:14 │腎臓内科に関する事